
乳がんについて
乳がんについて
乳がんは、乳腺の細胞が異常増殖してできる悪性腫瘍です。日本では女性がかかるがんの中で最も多く、現在では9人に1人が生涯のうちに乳がんを発症すると言われています。早期に発見し、適切に治療を行うことで、治癒や長期的なコントロールが可能な病気です。
明確な原因はわかっていませんが、以下のような因子が発症リスクに関係するとされています。
女性ホルモン(エストロゲン)に長期間さらされること→ 初潮が早い、閉経が遅い、出産経験がない・初産年齢が遅い
家族歴(母・姉妹に乳がんがある)
肥満・過度の飲酒
遺伝性(BRCA1/BRCA2遺伝子変異)
初期には無症状であることも多く、以下のような変化に注意が必要です:
乳房のしこり
乳房の皮膚のくぼみ・ひきつれ
乳頭からの血性分泌物や左右差
乳頭のただれ・陥没
腋の下のリンパ節の腫れ
定期的な自己触診や画像検査(マンモグラフィ・エコー)が早期発見の鍵となります。当院では以下の検査を組み合わせて診断します。
視触診:しこりや皮膚の異常を確認
超音波(エコー)検査:若年層にも有効。しこりの性質を確認
マンモグラフィ:しこりや石灰化の有無などを確認(特に40歳以上に有効)
吸引式乳腺組織生検(VAB):組織や細胞を採取し、がんかどうかを確定診断
乳房温存術:乳房を残しながらがんを切除
乳房全切除術:広範囲な病変に対して行う乳房をすべて切除する手術(再建手術も検討可)
化学療法:再発予防や手術前のがん縮小目的に行う抗がん剤治療
ホルモン療法:手術後にホルモン受容体陽性乳がんの場合に使用
放射線療法:乳房温存術後やリンパ節転移のある乳がんの再発予防に行う
乳がんは見た目が似ていても、薬が効くタイプ・効かないタイプがあるため、「がんの性質を正確に知ること(=サブタイプ診断)」が治療の第一歩です。
サブタイプ | ホルモン受容体 | HER2 | Ki-67 | 特徴 | 主な治療法 |
ルミナルA型 | 陽性 | 陰性 | 低い | 再発リスクが低い、穏やかなタイプ | ホルモン療法(内服) |
ルミナルB型(HER2陰性) | 陽性 | 陰性/弱陽性 | 高い | A型より再発リスクが高い | ホルモン療法+化学療法 |
ルミナルB型(HER2陽性) | 陽性 | 陽性 | 低〜高 | ホルモンとHER2両方に反応 | ホルモン療法+抗HER2薬+化学療法 |
HER2型 | 陰性 | 陽性 | 低〜高 | HER2治療がよく効くタイプ | 抗HER2薬+化学療法 |
トリプルネガティブ型 | 陰性 | 陰性 | 低〜高 | 治療選択肢が限られる。 | 化学療法+(一部で免疫療法) |
乳がんの術後治療では、ホルモン療法だけでよいのか、それとも抗がん剤(化学療法)を追加すべきかという判断が非常に重要です。このような場合に活用できるのが、オンコタイプDX(Oncotype DX)という遺伝子検査です。オンコタイプDXは、手術で切除した乳がんの組織から21種類のがん関連遺伝子の発現レベルを解析し、「再発リスク」や「化学療法による追加効果が見込めるか」を数値(再発スコア)として可視化することができます。この検査結果をもとに、必要な治療だけを選択し、不要な治療を回避することが可能になります。
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